妊娠中の美肌サプリは一律禁止ではありませんが、レチノール型ビタミンA、高用量のビタミンB6、安全性情報が十分でない美容成分は自己判断で追加しないことが重要です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」や国立成育医療研究センター、PMDAの情報を参考に、商品名ではなく「成分・1日量・重複・目的」の4点で確認しましょう。
妊娠中の美肌サプリで避けたい・確認したい成分は?
妊娠中の美肌サプリ選びでは、すべての成分を同じ危険度で考える必要はありません。まずは「積極的に避けたい」「量を確認したい」「安全性情報を個別確認したい」の3つに分けると整理しやすくなります。
分類 主な成分・商品 妊娠中の考え方
積極的に追加しない レチノールなどを多く含むビタミンAサプリ 妊娠中、とくに妊娠初期の過剰摂取を避ける
量を確認する ビタミンB6・C・Eなど 妊婦向けサプリや医薬品との重複を確認
個別確認する L-システイン、グルタチオン、ハーブ・複合美容成分など 美容目的なら自己判断で追加せず医師・薬剤師へ確認
ここでいう「確認が必要」は、成分そのものがすべて妊娠中に禁止という意味ではありません。
例えばビタミンB6やビタミンCは妊娠中にも必要な栄養素です。問題は、必要な栄養補給と、美容目的で高用量を追加することを同じに考えないことです。
国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」も、ビタミンやミネラルは基本的に食品から摂取することを勧める一方、葉酸については妊娠を考える女性などにサプリメント等からの摂取が推奨されると案内しています。
つまり、妊娠中に使う「妊婦向け栄養補助」と「美肌のための美容サプリ」は目的が違います。
葉酸など妊娠期に摂取が推奨される栄養素があるからといって、美容目的のサプリまで積極的に追加すべきとは限りません。
筆者としては、この区別こそ妊娠中のサプリ選びで最初に押さえておきたいポイントだと考えます。
妊娠中のビタミンAはなぜ注意?レチノール型を確認
妊娠中の美肌サプリで特に慎重に確認したいのが、レチノールなどの既成ビタミンAを多く含むサプリメントです。
ビタミンAそのものは皮膚や粘膜、視覚などに関係する必須栄養素なので、食事からのビタミンAまで一律に避けるものではありません。問題になるのは過剰摂取です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ビタミンAをレチノール活性当量「µgRAE」で示しています。
成人女性の推奨量は年齢によって異なり、18~29歳では1日650µgRAE、30~64歳では1日700µgRAEです。妊娠後期には通常の推奨量へ80µgRAEの付加量が設定されています。
一方、成人の耐容上限量は1日2,700µgRAEです。
ただし、この2,700µgRAEは「ここまでサプリで摂ればよい」という目標ではありません。
耐容上限量は過剰摂取による健康障害を避けるために設定される上限側の指標です。美容目的で上限近くを目指す数値ではないことを理解しておきましょう。
さらに注意したいのが、ビタミンAの種類です。
厚生労働省の食事摂取基準では、過剰摂取を考える際に、レチノールなどの既成ビタミンAと、食品に含まれるβ-カロテンなどのプロビタミンAカロテノイドを同じようには扱っていません。
そのため、美肌サプリの商品表示では「ビタミンA」という文字だけではなく、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油などの表示がないかまで確認することが重要です。
国立成育医療研究センターも、配合ビタミン剤にはビタミンAなど妊娠中の大量摂取を避けた方がよい成分が含まれる場合があるとして、妊婦用サプリメントの利用を勧めています。
さらに同センターなどによる約10万組の親子を対象としたエコチル調査の解析では、妊娠初期のビタミンAサプリメント摂取と子どもの先天性心疾患との関連が報告されています。
ただし、これは特定の人がビタミンAサプリを飲めば必ず問題が起こる、という意味ではありません。観察研究の結果だけから個人の結果を断定することもできません。
それでも、妊娠中、とくに妊娠初期に美容目的でビタミンAサプリを追加する必要性は慎重に考えるべきでしょう。

妊娠に気づかずビタミンAサプリを飲んでいた場合は?
妊娠に気づく前に飲んでいた場合も、「飲んでしまった」という事実だけで結果を決めつける必要はありません。
確認に必要なのは、商品名だけではなくビタミンAの種類、1日量、摂取期間、妊娠何週ごろまで摂取したかです。
商品パッケージや成分表示の写真を残し、産婦人科医へ具体的に伝えてください。
ビタミンC・B6・Eは妊娠中に何mg必要?
ビタミンC、B6、Eは妊娠中にも必要な栄養素です。そのため、「妊娠中だから禁止」と一括りにするのは正確ではありません。
一方、美肌サプリでは食事から摂る量を大きく上回る量が配合される場合があり、必要量と美容サプリの含有量を区別して見ることが大切です。
ビタミンCは妊婦の推奨量が1日110mg
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の成人女性のビタミンC推奨量は1日100mgです。
妊婦には10mgの付加量が設定されているため、1日110mgが推奨量となります。
ここで間違えやすいのが、「110mgを超えたら危険」と考えることです。
推奨量は多くの人が必要量を満たすための目安であり、安全と危険を分ける境界線ではありません。また、日本の食事摂取基準では健康な人を対象としたビタミンCの耐容上限量は設定されていません。
しかし、これは「妊娠中でも1,000mg、2,000mgと好きなだけ追加してよい」という意味でもありません。
高用量のビタミンCについては、海外の公的な栄養情報でも大量摂取による下痢、吐き気、腹部症状などが知られています。
美容目的で数百mg~1,000mg以上を含む商品を使用しているなら、妊婦向けサプリや医薬品まで含めた1日量を一度確認する方が合理的です。
ビタミンB6は「水溶性だから大丈夫」と考えない
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人女性のビタミンB6推奨量は1日1.2mg、妊婦には0.2mgの付加量が設定されています。
したがって妊娠中の推奨量は、基本的に1日1.4mgが目安です。
ビタミンB6は水溶性ビタミンですが、「余った分は尿に出るから何mgでも大丈夫」と考えるのは適切ではありません。
ピリドキシンなどのビタミンB6を長期間にわたり大量摂取した場合、感覚性ニューロパチーなどの神経障害が問題になることがあります。
美容サプリ、B群サプリ、妊婦向けマルチビタミンなどを併用すると同じB6が重複する可能性があるため、商品単位ではなく合計量で見ましょう。
ビタミンEも「脂溶性=禁止」ではない
ビタミンEは脂溶性ビタミンですが、人体に必要な栄養素です。
したがって通常の食事に含まれるビタミンEを避けたり、「脂溶性だから妊娠中は危険」と単純化したりする必要はありません。
確認したいのは、美容サプリと妊婦向けマルチビタミンなどを併用することで、知らないうちに摂取量が増えていないかです。
ここまでを見ると、妊娠中の美肌サプリでは「成分名だけで○×判定する」のではなく、必要量・商品含有量・他製品との重複をセットで読むことが重要だと分かります。
L-システイン・グルタチオンは妊娠中に飲める?
L-システインやグルタチオンは、美容を目的としたサプリメントで見かけることのある成分です。
ただし、妊娠中について十分な情報を確認できない美容成分は、「危険だと証明されていないから飲んでよい」と判断しないことが大切です。
L-システインは医薬品と美容サプリを分けて考える
L-システインは医療用医薬品にも使われています。
PMDAが公開する「ハイチオール錠40」「ハイチオール錠80」の2023年11月改訂添付文書では、有効成分としてL-システインがそれぞれ1錠40mg、80mg含まれています。
しかし、医療用医薬品として存在することは、妊娠中に市販の美容サプリを自己判断で飲んでよい根拠にはなりません。
医療用医薬品は、治療の必要性や患者の状態、用法・用量を踏まえて使用されます。一方、美容サプリは本人が美容目的で追加するケースが中心です。
同じ成分でも「何のために、どの量を、誰の管理下で使うか」が違うのです。
グルタチオンは「体内にある成分だから安全」とは限らない
グルタチオンは人体にも存在する物質ですが、体内にもともと存在することと、高用量のサプリメントを妊娠中に追加することの安全性は別問題です。
妊婦を対象とした美容目的の経口摂取について、安全性を判断するための十分な情報を確認できない商品では、自己判断で積極的に追加する理由は乏しいでしょう。
特にハーブ、植物抽出物、美容成分を多数組み合わせた海外製品などは、一つひとつの成分量が把握しにくい場合があります。
筆者としては、妊娠中に安全性情報が十分でない美容成分は「危険かどうかを検索で証明する」より、「今あえて追加する必要があるか」で判断する方が実用的だと考えます。
美容目的で緊急性がなければ、一時的に休止し、必要なら産婦人科医や薬剤師へ確認するという選択ができます。
妊娠中の美肌サプリは「成分別合計表」でどう確認する?
妊娠中に複数の製品を使っている場合、最も見落としやすいのが同じ栄養素の重複です。
「それぞれの商品を表示どおり飲んでいるから大丈夫」と考えるのではなく、成分ごとに1日の合計量を書き出してみましょう。
例えば、次のように整理します。
- ビタミンA:合計○µgRAE
- ビタミンB6:合計○mg
- ビタミンC:合計○mg
- ビタミンE:合計○mg
- 葉酸:合計○µg
- その他の美容成分:成分名と1日量
対象にするのは美肌サプリだけではありません。
妊婦向けマルチビタミン、健康食品、処方薬、市販薬まで含めて確認すると、成分の重複が見えやすくなります。

産婦人科や薬局へ相談するときは、次の情報があると具体的に確認しやすくなります。
- 商品名・メーカー名
- 成分表示の写真
- 1日に飲んでいる粒数
- 1日分の各成分量
- いつから摂取しているか
- 妊娠週数
- ほかのサプリ・処方薬・市販薬の有無
単位にも注意してください。
1mg=1,000µgなので、500µgと500mgでは1,000倍の差があります。ビタミンAでは「µgRAE」という単位が使われることもあるため、数字だけを比較しないようにしましょう。
この「成分別合計表」は、筆者が妊娠中のサプリ管理で特に実用的だと考える方法です。
商品を「妊婦サプリ」「美容サプリ」「薬」と箱ごとに分けて考えるより、同じ成分を横断して見ることで、重複という見えにくいリスクを把握しやすくなります。
妊娠中の美肌サプリをどう考える?筆者の考察
厚生労働省の食事摂取基準や国立成育医療研究センターの情報を確認すると、妊娠中の美肌サプリについて大切なのは、単純な「飲める成分・飲めない成分一覧」を作ることではないと考えます。
私が重視したいのは、成分・量・重複・目的の4つの軸です。
例えば、ビタミンCの妊婦推奨量は1日110mgです。
しかし、これは111mgから危険になるという数値ではありません。反対に、日本の食事摂取基準に耐容上限量が設定されていないからといって、美容目的で高用量を積極的に追加してよいという意味にもなりません。
ビタミンAの2,700µgRAEという耐容上限量も同様です。
推奨量と耐容上限量は役割が違います。妊娠中の美容で「上限ギリギリまで使えるか」を考えるより、必要な栄養を不足させず、不必要な高用量摂取を増やさないことの方が重要でしょう。
もう一つ注目したいのが、「妊娠中のサプリ=全部避ける」でもないことです。
国立成育医療研究センターは、基本的にはビタミン・ミネラルを食品から摂ることを勧めながら、葉酸については妊娠を考える女性などにサプリメント等からの摂取を勧めています。
これは、妊娠期に必要性が確立している栄養補助と、美容目的の追加摂取を分けるべきことを示す分かりやすい例です。
私はここに、妊娠中の美容サプリを選ぶ大きなヒントがあると思います。
「美容に良さそうだから足す」のではなく、「妊娠中の自分に必要な栄養なのか」「食事や妊婦向けサプリですでに摂れていないか」「安全性を確認できるか」を順番に見る方が、判断がぶれにくくなります。
また、妊娠中に肌の乾燥や色素沈着が気になる場合、美容サプリだけが選択肢ではありません。
保湿、紫外線対策、刺激を抑えたスキンケアなど、体内へ美容成分を追加しなくてもできる対策があります。
個人的には、妊娠中は美容を諦める時期ではなく、「足す美容」から「守る美容」へ比重を移す時期と考えると分かりやすいと思います。
なお、レチノール配合化粧品については、美肌サプリのビタミンAと同じ量の考え方をそのまま当てはめることはできません。
内服のビタミンAサプリ、処方される内服レチノイド、外用医薬品のレチノイド、化粧品に配合されるレチノールでは、使用方法や体内への曝露量が異なります。
そのため、「レチノールという名前があるから全部同じ危険度」と自己判断するのも、「塗るものだから必ず安全」と決めつけるのも適切ではありません。
妊娠中にレチノイド系医薬品を使用している場合は処方医へ確認し、化粧品についても妊娠中の使用可否が判断できなければ製品情報を確認したうえで医師・薬剤師へ相談してください。
すでに使用した場合も、成分名、濃度、使用期間、使用部位、内服か外用か、妊娠週数などによって判断材料は変わります。
検索結果だけで将来への影響を決めつけず、具体的な曝露情報を整理して医療者へ伝えることが、不安を具体的な判断へ変える一番確実な方法です。
まとめ|妊娠中の美肌サプリは成分・量・重複・目的で確認
妊娠中の美肌サプリは、一律に「飲める」「飲めない」と判断できません。
特に優先して確認したいのは、レチノールなどの既成ビタミンA、高用量になりやすいビタミンB6、妊娠中の安全性情報を十分に確認できない美容成分です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、妊婦のビタミンC推奨量は1日110mg、ビタミンB6は1日1.4mgが目安です。
ビタミンAの成人の耐容上限量は1日2,700µgRAEですが、これは美容目的で目指す摂取量ではありません。
また、葉酸のように妊娠前からの栄養補助が推奨される成分と、美容を目的に追加する美肌サプリは分けて考えることが大切です。
複数の商品を使用しているなら、商品ごとではなく成分ごとの1日合計量を一覧にしてください。
判断できない場合は商品パッケージや成分表示の写真を用意し、妊娠週数、使用量、使用期間、ほかのサプリ・医薬品とあわせて産婦人科医や薬剤師へ伝えると確認しやすくなります。
参考にする一次情報としては、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」、PMDAが公開する医薬品添付文書などがあります。
基準や添付文書、製品内容は更新・変更されることがあるため、実際に使用するときは最新情報を確認してください。
よくある質問
妊娠中に避けたい美肌サプリの成分は?
特に慎重にしたいのは、レチノールなどの既成ビタミンAを多く含むサプリメントです。
また、ビタミンB6などを高用量で含む商品や、妊娠中の安全性情報を十分に確認できない美容成分・ハーブ・複合サプリも、自己判断で追加せず医師や薬剤師へ確認してください。
妊娠中にビタミンCサプリを飲んでも大丈夫?
ビタミンCは妊娠中にも必要な栄養素で、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では妊婦の推奨量は1日110mgです。
110mgを超えたら直ちに危険という意味ではありませんが、美容目的で高用量を追加する必要性は別に考え、食事や妊婦向けサプリを含めた総摂取量を確認しましょう。
妊娠に気づく前に美肌サプリを飲んでいたらどうする?
使用したという事実だけで影響を決めつけず、商品名、成分名、1日量、使用期間、妊娠何週ごろまで使用したかを整理してください。
成分表示の写真や商品パッケージを持参し、産婦人科医へ相談すると具体的な判断材料になります。



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