『ベルサイユのばら』は、フランス革命を背景にした壮大な物語であり、多くの実在の人物が登場します。その中で、主人公オスカルの妹分的存在として描かれるロザリー・ラ・モリエールは、フィクションのキャラクターですが、実在のモデルがいるのではないかと長年議論されています。
実際に、ロザリーという名前の女性は18世紀フランスに存在していました。特に、マリー・アントワネットが処刑されるまでの最後の瞬間を見届けたとされる女中、ロザリー・ラモルリエールの存在が、池田理代子氏の創作に影響を与えた可能性が高いと考えられています。
しかし、作中で描かれるロザリーの出生の秘密や、ポリニャック伯夫人との関係、ジャンヌ・ヴァロワとのつながりは、史実と異なる部分が多く、フィクションとしての脚色が加えられています。この記事では、『ベルサイユのばら』のロザリーがどのように創作されたのか、モデルとなった実在の人物との関係を詳しく解説していきます。
- 『ベルサイユのばら』のロザリー・ラ・モリエールの役割と成長の過程
- ロザリーのモデルとされる実在の人物・ロザリー・ラモルリエールの生涯
- ロザリーとポリニャック伯夫人やジャンヌ・ヴァロワの関係の史実との違い
- 池田理代子氏の創作意図とロザリーが持つ魅力
- 宝塚やアニメでのロザリーの描かれ方と、その人気の理由
ロザリー・ラ・モリエールとは?『ベルサイユのばら』での役割
『ベルサイユのばら』に登場するロザリー・ラ・モリエールは、物語の中でオスカルの庇護を受けながら成長し、フランス革命の動乱に巻き込まれていく女性です。
池田理代子氏が創作したキャラクターであるロザリーですが、彼女の名前や境遇は実在した「ロザリー・ラモルリエール」という人物に着想を得ているとされています。
本作におけるロザリーは、貴族と平民の間で揺れ動く複雑な立場に置かれながらも、自らの道を模索し続ける存在です。彼女はオスカルやベルナールと出会いながら、人生の目的を見出し、最終的には革命の時代を生き抜いていくことになります。
オスカルとの出会いと成長
ロザリーの人生が大きく変わるきっかけとなったのはオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェとの出会いでした。
彼女は幼い頃から母と共に貧しい生活を送っており、病気の母を支えるために必死に生きていました。しかし、ある日、泥酔した貴族に声をかけられ、母の治療費を得るために身を売ろうと決意します。
そこに偶然現れたのがオスカルでした。ロザリーの窮状を見たオスカルは、彼女に金貨を渡し、彼女の誇りを守るために助けました。この出来事がきっかけで、ロザリーはオスカルに深い憧れを抱くようになり、後にジャルジェ家に引き取られることになります。
ジャルジェ家での生活を通じて、ロザリーは貴族の礼儀作法や社会の仕組みを学ぶと同時に、オスカルの生き方に影響を受けていきます。彼女は初めは気弱で泣き虫でしたが、次第に芯の強い女性へと成長していきました。
復讐から愛へ、ロザリーの人生の変遷
ロザリーの人生には、大きな転機が訪れます。それは、母の死の真相を知ることでした。彼女の母は、貴族の馬車にひき殺されたのです。そして、犯人と思われる貴婦人を捜す過程で、彼女は驚くべき事実を知ることになります。
実は、ロザリーの生母はポリニャック伯夫人であり、彼女こそがロザリーの育ての母を死に追いやった張本人だったのです。この衝撃的な事実により、ロザリーは激しい復讐心を抱きます。
しかし、運命はさらに残酷でした。ポリニャック伯夫人の娘であり、ロザリーの異父妹であるシャルロットが、政略結婚を強要され、絶望の末に自ら命を絶ってしまいます。この出来事が、ロザリーの心を大きく揺さぶりました。
復讐に燃えていた彼女は、次第に復讐よりも「生きることの大切さ」を見出すようになります。そして、彼女はポリニャック家を離れ、貴族社会から距離を置くことを選びます。
フランス革命の波に飲まれたロザリーの運命
フランス革命が勃発すると、ロザリーの人生はさらに激動の渦へと飲み込まれていきます。彼女は革命派の新聞記者であり、義賊「黒い騎士」として活動していたベルナール・シャトレと再会します。
ベルナールは、貴族の横暴に抗い、革命の正義を貫こうとする人物でした。ロザリーは彼と行動を共にすることで、次第に革命の理念を理解し、自らも革命に参加するようになります。そして、二人は強い絆で結ばれ、結婚することになりました。
しかし、革命は決して甘くはありませんでした。オスカルの死、そしてマリー・アントワネットの処刑など、彼女の周囲の人々が次々と命を落としていきました。
やがて、ロザリーはコンシェルジュリー牢獄で、マリー・アントワネットの世話をすることになります。皮肉にも、かつて自分が憎んでいた貴族の頂点にいた王妃と、最も近い関係になったのです。
牢獄での王妃は、かつての華やかな姿とはかけ離れたものでした。しかし、ロザリーは王妃の最後の瞬間まで寄り添い、彼女の人間的な側面を理解していきます。
そして、マリー・アントワネットがギロチンにかけられる日、ロザリーは涙を流しながら彼女を見送りました。この経験は、彼女の人生において最も忘れられない出来事となったのです。
ロザリーのモデルとされるロザリー・ラモルリエールとは?
『ベルサイユのばら』に登場するロザリー・ラ・モリエールのモデルとされるのが、実在したロザリー・ラモルリエール(Rosalie Lamorlière)です。
彼女はフランス革命期にコンシェルジュリー牢獄でマリー・アントワネットの世話をした女中であり、王妃が処刑されるその瞬間まで傍にいたことで知られています。
本名はマリー・ロザリー・ドラモルリエール(Marie Rosalie Delamolliere)であり、平民の靴職人の娘として生まれました。彼女は文盲でしたが、王妃と過ごした最後の日々の記録を後世に残し、その存在が歴史に刻まれました。
実在したロザリー・ラモルリエールの生涯
ロザリー・ラモルリエールは1768年3月3日に生まれ、1848年2月2日に亡くなったとされています。彼女の人生は、フランス革命という激動の時代に大きく影響を受けました。
彼女の家系は貴族ではなく、ごく普通の庶民の家庭でした。しかし、若くして奉公に出され、最終的にはコンシェルジュリー牢獄で働くことになりました。そこで、彼女はマリー・アントワネットの世話をすることになります。
彼女の役割は、王妃の身の回りの世話をすることでしたが、単なる使用人以上の存在でした。王妃の心の支えとなり、最期の瞬間まで寄り添い続けたといわれています。
マリー・アントワネットとの関係
ロザリー・ラモルリエールが仕えたマリー・アントワネットは、フランス革命により王妃の立場を奪われ、裁判で死刑を宣告されました。
コンシェルジュリー牢獄に収監された王妃は、かつての華やかな宮廷生活とは一変し、極めて過酷な環境の中で生活していました。そんな中、彼女の世話をしたのがロザリー・ラモルリエールでした。
ロザリーは王妃に食事を運び、髪を整え、衣服を整えるなどの身の回りの世話をしていました。しかし、それだけではなく、王妃の心の支えとなり、優しく接し続けたことが記録されています。
マリー・アントワネットが処刑される朝、ロザリーは王妃の髪を短く切る役目を命じられました。王妃は処刑の直前まで気丈に振る舞い、ロザリーに感謝の言葉を伝えたと言われています。
獄中での手記と証言
ロザリー・ラモルリエールは、マリー・アントワネットと過ごした日々を後に手記として残しました。その記録は、革命期の王妃の姿を伝える貴重な史料となっています。
手記の中では、王妃がどのような生活を送り、どのような気持ちで最期を迎えたのかが描かれています。そこには、王妃の優雅さや気高さが失われなかったこと、また、王妃が自身の運命を受け入れ、覚悟を決めていたことが記されています。
ロザリーの証言は、歴史家によっても重要視され、王妃の最期の日々を知るための貴重な情報源となっています。彼女の記録は、池田理代子氏の『ベルサイユのばら』にも影響を与えたと考えられています。
ロザリー・ラモルリエールの存在がなければ、王妃の最期の姿がここまで詳しく伝わることはなかったかもしれません。その意味で、彼女はフランス革命の裏側にいた重要な人物の一人と言えるでしょう。
『ベルサイユのばら』におけるフィクションと史実の違い
『ベルサイユのばら』では、ロザリー・ラ・モリエールは激動のフランス革命を生き抜いた女性として描かれていますが、史実と比較すると多くの脚色が加えられています。
特に、ロザリーとポリニャック伯夫人との関係や、ジャンヌ・ヴァロワとの姉妹設定は、フィクションならではの要素です。
ここでは、物語と史実の違いを詳しく解説し、実際のロザリー・ラモルリエールがどのような人物だったのかを見ていきましょう。
ロザリーとポリニャック伯夫人の関係は実際にあったのか?
『ベルサイユのばら』では、ロザリーの生母がポリニャック伯夫人(ヨランド・ド・ポラストロン)であるという設定が描かれています。
しかし、史実ではポリニャック伯夫人にはロザリーという娘は存在しません。彼女の実際の子供は、アグラエ、アルマン、ジュール、メルシオールの4人であり、ロザリーとは無関係です。
また、ポリニャック伯夫人は、フランス王妃マリー・アントワネットの寵臣として知られていますが、平民の子供を秘密裏に産むような記録は残っていません。つまり、『ベルサイユのばら』の設定は完全に創作されたものといえます。
ジャンヌ・ヴァロワとの姉妹設定は本当か?
ジャンヌ・ヴァロワは、史実において「首飾り事件」の中心人物として知られています。彼女は、フランス王家の血を引くと主張し、策略を巡らせて王妃の名を騙ったことで歴史に名を残しました。
しかし、『ベルサイユのばら』では、ジャンヌとロザリーは異父姉妹であるとされています。この設定は史実にはなく、二人が姉妹であったという証拠は存在しません。
実際のロザリー・ラモルリエールは、ジャンヌとは無関係であり、ジャンヌ自身も貴族との血縁関係を証明できないまま、一介の詐欺師として歴史に名を刻みました。
作中のロザリーと実在のロザリーの違い
『ベルサイユのばら』のロザリー・ラ・モリエールは、貴族と庶民の間で揺れ動くキャラクターとして描かれています。しかし、実在のロザリー・ラモルリエールは、まったく異なる人生を歩んでいました。
- 作中のロザリーは、ポリニャック伯夫人の娘であり、ジャンヌ・ヴァロワの異父妹とされていますが、実際のロザリーは平民の靴職人の娘でした。
- 作中のロザリーは貴族の世界と庶民の世界の両方を経験しますが、実在のロザリーは生涯を庶民として生き、最終的にはコンシェルジュリー牢獄で女中として働いた人物です。
- 作中のロザリーは、フランス革命の戦士ベルナール・シャトレと結婚し、政治活動にも関与しますが、実在のロザリーにはそのような記録はありません。
このように、『ベルサイユのばら』のロザリーは多くのフィクションが加えられたキャラクターであり、実在のロザリー・ラモルリエールとは異なる人物として描かれています。
池田理代子氏の創作意図とロザリーの魅力
『ベルサイユのばら』は、フランス革命という激動の時代を舞台に、架空のキャラクターと実在の歴史上の人物が交錯する壮大な物語です。その中で、ロザリー・ラ・モリエールは、庶民と貴族の間で揺れ動く存在として描かれ、作品の中でも重要な役割を担っています。
池田理代子氏がロザリーというキャラクターを創作した背景には、「革命の時代を生きた女性の視点を取り入れる」という意図があったと考えられます。ロザリーは、貴族社会の虚栄や不正を目の当たりにしながらも、人間としての成長を遂げ、革命の流れに飲み込まれていきます。
ここでは、ロザリーの役割と彼女が持つ特別な背景、そして彼女が長年にわたり読者から愛され続ける理由について詳しく解説していきます。
フィクションとしてのロザリーの役割
『ベルサイユのばら』におけるロザリーの役割は、「庶民の視点からフランス革命を描く」という点にあります。
物語の主人公であるオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェは、貴族階級に属しながらも平民の視点を持つ稀有な存在ですが、彼女はあくまでも「貴族の内部にいる人物」です。そのため、庶民の厳しい生活や革命の動きに対して、完全に中立的な立場ではありません。
一方、ロザリーは平民出身のキャラクターとして、社会の不平等や貴族の横暴を目の当たりにしながらも、貴族社会に足を踏み入れます。彼女を通じて、読者は貴族の華やかな生活だけでなく、それに伴う問題点やフランス革命の背景を知ることができます。
また、ロザリーは「復讐」というテーマを持つキャラクターでもあります。彼女は母をひき殺した貴族に復讐しようとしますが、その過程で自身の出生の秘密を知り、貴族社会と庶民社会の間で揺れ動くことになります。この葛藤が、ロザリーを単なるサブキャラクターではなく、読者に感情移入させる重要な存在へと昇華させています。
なぜロザリーに特別な背景が与えられたのか?
ロザリーのキャラクターには、他の登場人物にはない「特別な背景」が設定されています。その一つが、「ポリニャック伯夫人の娘である」という設定です。
ポリニャック伯夫人は、マリー・アントワネットの寵臣として知られ、フランス革命期においても強い影響力を持っていた人物です。そんな彼女が、庶民の間に隠し子を持っていたという設定は、貴族社会の秘密や腐敗を象徴的に描くための創作だったと考えられます。
また、ロザリーの実姉としてジャンヌ・ヴァロワが設定されている点も興味深い点です。ジャンヌは「首飾り事件」の中心人物であり、フランス革命のきっかけの一つを作った女性です。そんな彼女とロザリーを姉妹にすることで、「革命に巻き込まれる女性たちの物語」という側面を強調しているのです。
このように、ロザリーの背景にはフィクションならではの設定が加えられていますが、それによって物語全体がより深みのあるものになっています。
ロザリーというキャラクターが愛される理由
ロザリーは、オスカルやアントワネットのように圧倒的なカリスマ性を持つキャラクターではありません。しかし、彼女は「読者にとって最も共感しやすいキャラクター」であることが、長年愛され続ける理由の一つです。
ロザリーは、最初は気弱で純粋な少女として登場しますが、オスカルやベルナールとの出会いを通じて、自らの意志で生きていく強さを身につけていきます。この成長の過程が、多くの読者に感動を与えてきました。
また、彼女の恋愛模様も読者の共感を呼ぶ要素の一つです。オスカルに憧れを抱きながらも、最終的には革命家のベルナールと結ばれることで、「革命の時代を共に生きるパートナーとしての愛」を描いています。
さらに、ロザリーは「貴族社会の華やかさ」と「庶民の苦しみ」の両方を経験したキャラクターであり、革命という時代の象徴的な存在ともいえます。彼女の視点を通じて、読者はフランス革命という歴史の一端を感じることができるのです。
こうした要素が組み合わさることで、ロザリーは『ベルサイユのばら』の中でも特に愛されるキャラクターの一人となっています。
ロザリーの人気と『ベルサイユのばら』の影響
『ベルサイユのばら』は、漫画、アニメ、映画、舞台とさまざまなメディアで展開され、長年にわたり多くのファンに愛され続けています。その中で、ロザリー・ラ・モリエールは、オスカルやマリー・アントワネットと並ぶ重要なキャラクターとして描かれ、特に女性読者からの共感を集めてきました。
ロザリーは、庶民の視点を持ちながら貴族社会に足を踏み入れ、革命の激動を経験するキャラクターです。その成長や葛藤が多くの人々に感動を与え、作品の奥深さを高めています。
ここでは、『ベルサイユのばら』のさまざまなメディアにおけるロザリーの描写や、現代における彼女の人気について詳しく見ていきます。
宝塚版『ベルサイユのばら』でのロザリー
宝塚歌劇団のミュージカル版『ベルサイユのばら』は、1974年の初演以来、何度も再演されている人気作品です。通算観客動員数は500万人を超え、宝塚の代表的な演目のひとつとなっています。
宝塚版では、ロザリーの役割は作品によって大きく異なります。初期の公演では、ロザリーはオスカルやアントワネットを引き立てるサブキャラクターとしての位置づけでしたが、近年の公演では彼女の物語にも焦点が当てられることが増えました。
特に「外伝 ベルサイユのばら」では、ロザリーとベルナールの関係や、彼女がいかにして革命に関与していったのかが深く描かれています。これは、ロザリーというキャラクターが持つ成長と変化の魅力が、舞台でも重要視されるようになったことを示しています。
アニメや映画でのロザリーの描写
1979年に放送されたアニメ版『ベルサイユのばら』では、ロザリーはオスカルの妹的な存在として描かれています。アニメでは、彼女の視点から物語が進む場面も多く、庶民の目線でフランス革命を描く上で欠かせないキャラクターとなっています。
また、ロザリーの声を担当したのは松尾佳子であり、彼女の可憐で繊細な演技がロザリーのキャラクターを際立たせました。
実写映画版『ベルサイユのばら』(1979年)では、ロザリーの登場シーンは少ないものの、原作の重要な部分は反映されています。しかし、映画の尺の関係で彼女の背景は深く描かれず、原作やアニメほどの存在感はありませんでした。
ロザリーは現代においても愛され続けるキャラクター
『ベルサイユのばら』が誕生してから50年近くが経過しましたが、ロザリーは今もなお多くのファンに愛され続けています。その理由の一つは、彼女が時代や社会の変化を象徴するキャラクターであることです。
ロザリーの物語は、単なる「フランス革命の中の少女」ではなく、女性が自分の人生を切り開く姿を描いています。これは、現代に生きる多くの女性にとっても共感できる要素となっています。
また、近年では『ベルサイユのばら』のリバイバルブームにより、若い世代のファンが増えており、ロザリーのキャラクターが再評価されています。宝塚公演の新演出や、アニメの再放送を通じて、彼女の魅力が再び注目される機会が増えています。
このように、ロザリーは『ベルサイユのばら』の中で、ただの脇役ではなく、時代と共に変化しながら愛され続ける存在なのです。
まとめ:ロザリーは実在したのか?
『ベルサイユのばら』に登場するロザリー・ラ・モリエールは、史実に基づいたキャラクターではあるものの、完全に実在したわけではありません。彼女のモデルとされるロザリー・ラモルリエールは、マリー・アントワネットの最期を見届けた実在の女性ですが、物語のロザリーとは大きく異なります。
池田理代子氏は、歴史上の人物や出来事を元にしながらも、フィクションとしてのドラマ性を高めるために、ロザリーのキャラクターに独自の設定を加えました。この結果、彼女は貴族と庶民の間で葛藤する象徴的な存在となり、多くの読者から共感を得るキャラクターへと昇華されたのです。
ここでは、史実とフィクションの融合、モデルとなった人物の影響、そして『ベルサイユのばら』が生んだロザリーの魅力について詳しく見ていきます。
史実とフィクションの融合
『ベルサイユのばら』は、フランス革命という歴史的な出来事を舞台にしながらも、実在の人物と架空のキャラクターが絡み合うフィクションとして描かれています。ロザリーもその一例であり、歴史の一部を反映しつつも、大幅な脚色が加えられたキャラクターです。
例えば、史実ではロザリー・ラモルリエールは平民の出身であり、貴族との血縁関係は一切ありません。しかし、物語の中では彼女がポリニャック伯夫人の隠し子であるという設定が付け加えられています。これは、貴族社会の虚栄や腐敗を象徴するためのフィクションとしての演出でした。
また、ロザリーはオスカルやベルナールとの関わりを通じて、革命の中心に身を置くことになりますが、実在のロザリー・ラモルリエールにはそのような記録はなく、彼女はあくまで牢獄でマリー・アントワネットの世話をした女性でした。
モデルとなった人物の影響
ロザリー・ラモルリエールは、マリー・アントワネットの最期を知る貴重な証言者として知られています。彼女はコンシェルジュリー牢獄で王妃の世話をし、最期の瞬間まで寄り添いました。この献身的な姿勢が、池田理代子氏の創作に影響を与えたと考えられます。
ロザリー・ラモルリエールが王妃の処刑を見届けた後、彼女がどのような人生を歩んだのかについての記録は少ないものの、王妃の最期を伝える貴重な証言を残したことで、歴史の中に名を刻んでいます。
『ベルサイユのばら』のロザリーは、この実在の女性の名前や一部のエピソードを参考にしながらも、よりドラマティックな人生を歩むキャラクターとして描かれました。特に、貴族の血を引く設定や、革命家ベルナールとの恋愛などは、フィクションならではの要素です。
『ベルサイユのばら』が生んだロザリーの魅力
ロザリー・ラ・モリエールが長年にわたり愛され続ける理由は、彼女の成長物語にあります。
- 最初は母親に依存し、無力だった少女が、オスカルとの出会いを通じて自立した女性へと成長する。
- 貴族社会と庶民の間で揺れ動きながらも、自分の道を見つける。
- ベルナールとの愛を通じて、革命の激動の中で信念を持つ女性へと変わっていく。
このような変化が、多くの読者の共感を呼び、ロザリーというキャラクターの魅力を高めています。
また、ロザリーの物語は「自分の運命を自分で切り開く」というテーマを持っています。彼女は、最初は復讐心に囚われていましたが、次第にそれを乗り越え、愛と信念のために生きる道を選びました。この姿は、現代の女性にも強く響くものがあり、時代を超えて愛される理由の一つとなっています。
『ベルサイユのばら』は、ロザリーというキャラクターを通じて、フランス革命の社会背景や人々の生き様を描きました。フィクションではありながらも、彼女の人生はまるで本当に存在したかのように読者の心に残り続けています。
こうして、ロザリーは単なる創作キャラクターではなく、歴史とフィクションの狭間で輝く存在となったのです。
- ロザリー・ラ・モリエールは、庶民と貴族の間で揺れ動くキャラクターとして描かれる
- 彼女のモデルとされるロザリー・ラモルリエールは、マリー・アントワネットの最期を見届けた実在の女性
- 作中のロザリーと史実のロザリーには大きな違いがあり、物語の設定にはフィクションが含まれている
- ロザリーはオスカルやベルナールとの関わりを通じて成長し、革命の激動に巻き込まれる
- 宝塚やアニメ、映画でのロザリーの描写は作品ごとに異なり、時代とともにその役割も変化している
- 『ベルサイユのばら』を通じて、ロザリーは「自分の運命を切り開く女性」として多くの人々に愛されている
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